聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 ―――あれは、何だ…?


 真っ青な顔で、青年の傍らに在る男を見つめる。禍々しい力を全身に纏わりつかせるその男が言葉を発しただけで、声を奪われたかのように喉に音が張り付いて出て来なくなり、体も鉛のように重く感じる。………いや、他人から借りたもののように、思ったように動かない。


「……さて」


 漸く青年が顔を上げ、少年へと視線を移した。灰白の瞳が、愉快そうに細められる。


「あれを、殺せ」


「―――仰せのままに」

< 11 / 132 >

この作品をシェア

pagetop