聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
くすんだ茶色とでも喩えれば良さそうな猫っ毛の髪を自由に飛び跳ねさせ、のんびりと媒介の石から生まれた使い魔の犬を可愛がっているのは、魔法薬学士の資格を持つ教師―――リオ=バルジェスター。
薬学に関する知識はおそらく他の教師たちの誰よりも抜きんでており、身なりのだらしなさに反して教え方が上手いと専らの評判の教師だ。ただ研究が趣味といえるような人物で、授業の時間さえ彼の授業の係に抜擢された生徒が呼びに行かなければ忘れているような少し残念な一面もある。しかし、魔法薬は使用アイテム可能なものとして数えられているし、彼はそれらの専門的な知識を豊富に持つエキスパートだ。侮ることはできない。
そんな彼の身なりをできるだけ整えようと、犬とじゃれ合う彼に文句を言いながら髪を梳かしつけようと悪戦苦闘している、クリーム色の髪をうなじの当たりで一つに括っている女性の教師の名は、ルチル=マーフォード。
彼女はリオのように資格は持っていないが、フォースの魔法訓練の指導官として、あるいは訓練の相手として平常時は常に生徒を鍛えているらしい。当然魔力が尽きた場合の対処法などに使うアイテムでどんなものが効果的なのかも、経験として知っているはずだ。それを活かしきれぬままに生徒に一撃を食らうほどの隙を見せるはずがない。
そして、そんな子供のような同僚の様子を、静観しているのが今回の試験管の中で最も最年長だろう人物―――今年で五十路を迎えたはずの教師、バーンズ=メルベルン………ティリー・ルフィスの代理でもある、副学長でもある。
彼は過去に魔法危険物の処理の資格を取ったこともあって、一時期禁術師―――黒法術師(ヴァルスファイル)や悪魔召喚士(イビルサマナー)、呪術師(ウォーロック)といったような、魔法の禁忌を犯して何らかのものを生み出す魔法使いのことを指す―――を殲滅するために結成された組織の一員であったらしく、彼はそういった組織に派遣される形で、生徒がそういった道に進まないようにという監督者としての立場でこの教職の場へ落ち着いた。
そのため常識を打ち破った相手に対処するための知識も、場数も踏んでいるはず。―――簡単に倒せる相手ではないと、纏う気迫からもびしびし感じる。
薬学に関する知識はおそらく他の教師たちの誰よりも抜きんでており、身なりのだらしなさに反して教え方が上手いと専らの評判の教師だ。ただ研究が趣味といえるような人物で、授業の時間さえ彼の授業の係に抜擢された生徒が呼びに行かなければ忘れているような少し残念な一面もある。しかし、魔法薬は使用アイテム可能なものとして数えられているし、彼はそれらの専門的な知識を豊富に持つエキスパートだ。侮ることはできない。
そんな彼の身なりをできるだけ整えようと、犬とじゃれ合う彼に文句を言いながら髪を梳かしつけようと悪戦苦闘している、クリーム色の髪をうなじの当たりで一つに括っている女性の教師の名は、ルチル=マーフォード。
彼女はリオのように資格は持っていないが、フォースの魔法訓練の指導官として、あるいは訓練の相手として平常時は常に生徒を鍛えているらしい。当然魔力が尽きた場合の対処法などに使うアイテムでどんなものが効果的なのかも、経験として知っているはずだ。それを活かしきれぬままに生徒に一撃を食らうほどの隙を見せるはずがない。
そして、そんな子供のような同僚の様子を、静観しているのが今回の試験管の中で最も最年長だろう人物―――今年で五十路を迎えたはずの教師、バーンズ=メルベルン………ティリー・ルフィスの代理でもある、副学長でもある。
彼は過去に魔法危険物の処理の資格を取ったこともあって、一時期禁術師―――黒法術師(ヴァルスファイル)や悪魔召喚士(イビルサマナー)、呪術師(ウォーロック)といったような、魔法の禁忌を犯して何らかのものを生み出す魔法使いのことを指す―――を殲滅するために結成された組織の一員であったらしく、彼はそういった組織に派遣される形で、生徒がそういった道に進まないようにという監督者としての立場でこの教職の場へ落ち着いた。
そのため常識を打ち破った相手に対処するための知識も、場数も踏んでいるはず。―――簡単に倒せる相手ではないと、纏う気迫からもびしびし感じる。