聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「それじゃあ、それなりに頑張ることにしましょう」


 にっこりと笑うリオの言葉を幕開けとして、三人の生徒が前に進み出る。構える三人の教師に、それぞれ自らの得意とする方法で攻撃を開始する。


 リオの相手は、ボウガンを右手に装着し、左手のブレスレッドを媒介として魔法を行使する少年だ。ボウガンによる物理攻撃で相手を牽制しながらの魔法攻撃は、おそらく敵を簡単には懐に潜り込ませない連続攻撃を生み出す。


「うん。ボウガンでの目測も、どんな魔法を使うかも及第点」


 笑顔でそう言いながら、リオがポケットから取り出した液体の魔法薬が地面にばらまかれる。炎の魔法球が少年の手から放たれたというのに随分と落ち着き払ったリオに、いったい何を企んでいるのかと見ていれば、薬をかけた地面から、突如互いを支えあうかのように絡みつきながら天へ向かって伸びていく木が出てきた。


 唖然とする少年の放った火の球はその太い幹に衝突するが、水を多分に含んでいるのが、少々焦げた程度で特になんの異常も見当たらない。


「ほら、まだまだ行くよ」


 続けざまにリオが放った液体が、少年の魔法ではびくともしなかった木の根にあたる場所へと染み込んでいくと、不快な音をたてて木が揺れ始める。


「そぉーれっ」


 掛け声とともに木の幹を蹴ったリオの視線の先には、呆然と立ち尽くす少年の姿。


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