聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 ―――殺される。


 そう頭では理解できる。だが、恐怖に震える体に幾ら命令を下しても、使い勝手の悪い機械のように動かない。


 ―――今度こそ、終わりなのか。


 不意に生まれた思いが、絶望をつれてやってくる。


「……ぃゃ…だ…」


 掠れる声で紡がれた言葉は、青年に届かない。


 もう、諦めるしかなかった。


 だが。


 恐怖に絡み取られた声が、一気に自由になる。


「死にたく、ないっ!」


 叫びが、大地を震わせる。


 ―――救ってやる。お前が望むなら。


 何処からか響いてきた声に、少年は身を委ねた―――…。

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