聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
それでも、なんとかフォースに上がるためのステップはクリアしたわけだ……と、納得しようにも、教師たちの鬼畜すぎるお仕置きに対する怒りがはるかに上回り、受かろうが落ちようが、何らかの報復を与えてやると黒い思念に取り付かれる。
いくらか体力に自信があるために、ヴォルクスのような立ち上がれないほどの疲労感はない。しかし心地よい気怠さとは例えられないくらいには疲れていた。ゆえにフェイトは、傍らのヴォルクスのそんな黒い笑みを見て引きつった笑いを零しながら、これは止められそうにないなと友人としての常識ある行動をあっさり放棄した。自分だって教師たちの酷い仕打ちに怒りを覚えている。それなりの報復が故意にとはいえ与えられるのなら、それを止めるつもりは毛頭ない。
――――もっとも、ヴォルクスのことだからちょっとした悲鳴を上げる程度の悪戯めいたことしかしないだろうし、友人の気が晴れるのなら好きにすればいいと思ったのも本音ではあったが。
とりあえず説得を放棄するなら考えるのも打ち切ってしまおうと思考を巡らせることを止めて、フェイトは周囲の様子をうかがう。
「………例年より少ない気がするな…」
お仕置き程度では済まされないトラップに塗れた試験会場だったとは言え、去年より三分の一程度の人数しか現時点の試験に受かってないのを見て、フェイトは眉を潜める。
過去の事例に、ここまで酷い事態が起きたという記録はない。自然にそうなったとしては、随分と悲惨な状況だ。
それでも、サードの試験会場にいる身ゆえに、全体の状況は掴めない。各学年毎に試験に集中できるように、魔法障壁などで五感を各会場から隔絶されている。すべての会場の状況を知るには、試験を終えて各会場の合否結果の確認をするときに様子を窺うか、途中辞退して会場を周り様子を見るかの二択だ。
自分一人ならここで辞退しても自分ひとりの責任で済むのだからいい。しかし今回はペアで行動する試験を主としたものだ。ヴォルクスまで巻き込むことになるのは避けたい。
思案するフェイトの視線の先には、トラップに巻き込まれて怪我を負った生徒たちが、法術によって治癒される姿がある。その姿を見ながら、彼は更なる状況悪化になったとき、どう行動するべきか、思考に耽っていた―――…。
いくらか体力に自信があるために、ヴォルクスのような立ち上がれないほどの疲労感はない。しかし心地よい気怠さとは例えられないくらいには疲れていた。ゆえにフェイトは、傍らのヴォルクスのそんな黒い笑みを見て引きつった笑いを零しながら、これは止められそうにないなと友人としての常識ある行動をあっさり放棄した。自分だって教師たちの酷い仕打ちに怒りを覚えている。それなりの報復が故意にとはいえ与えられるのなら、それを止めるつもりは毛頭ない。
――――もっとも、ヴォルクスのことだからちょっとした悲鳴を上げる程度の悪戯めいたことしかしないだろうし、友人の気が晴れるのなら好きにすればいいと思ったのも本音ではあったが。
とりあえず説得を放棄するなら考えるのも打ち切ってしまおうと思考を巡らせることを止めて、フェイトは周囲の様子をうかがう。
「………例年より少ない気がするな…」
お仕置き程度では済まされないトラップに塗れた試験会場だったとは言え、去年より三分の一程度の人数しか現時点の試験に受かってないのを見て、フェイトは眉を潜める。
過去の事例に、ここまで酷い事態が起きたという記録はない。自然にそうなったとしては、随分と悲惨な状況だ。
それでも、サードの試験会場にいる身ゆえに、全体の状況は掴めない。各学年毎に試験に集中できるように、魔法障壁などで五感を各会場から隔絶されている。すべての会場の状況を知るには、試験を終えて各会場の合否結果の確認をするときに様子を窺うか、途中辞退して会場を周り様子を見るかの二択だ。
自分一人ならここで辞退しても自分ひとりの責任で済むのだからいい。しかし今回はペアで行動する試験を主としたものだ。ヴォルクスまで巻き込むことになるのは避けたい。
思案するフェイトの視線の先には、トラップに巻き込まれて怪我を負った生徒たちが、法術によって治癒される姿がある。その姿を見ながら、彼は更なる状況悪化になったとき、どう行動するべきか、思考に耽っていた―――…。