聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
第三楽章
「………騒がしいな」
学生寮の中。
喧騒に満ちているのはいつものことだが、今日は昇格試験で大半が寮を出払っているために、静けさに満ちた時間が多かったというのに、陽が高くなるにつれ、いつものような……いや、いつもより騒がしい音が鼓膜を震わす。
アルジスは本を読む手を止め、カーテンの閉まった窓を開けて外の様子を伺う。一応幻術で姿を視認できないようにさせてはいるが、そのような配慮も必要ないのではないかと思えるほど、眼下では目まぐるしく生徒たちが走り回っている。本当に、どうしたというのか。
事態の把握のためだと考え、生徒たちの会話が聞こえるように魔法を行使してみる。そうして聞いた内容に、アルジスは驚愕した。
「えっ、嘘!? フォース試験者全滅したの?」
「らしいぜ。野生動物が魔法や薬によって強化されて、教師でも太刀打ち出来ないくらいに凶暴化してるらしい。重症を負った連中の救護に、予定より法術使いの生徒の人数増やして法術行使の協力要請したらしいけど、意識不明の奴が二桁超えたってよ」
「怖ぇな、それ。他の学年の試験はどうなんだよ」
「それが、例年よりずっと人数が少ないらしい。試験の途中に負傷した奴が多くて、法術使いが次々と力の行使のしすぎで倒れてるから、治療も満足にできてない」
「どーすんのよ!」
「先生たちが、試験受けてない法術齧ったやつとかにも協力要請しはじめたって。俺達も、軽傷の連中の手当のための道具運びとかで呼ばれるかもよ」
――――サリアは、無事なのか。
不安に襲われるが、彼らの話を聞く限り全滅したのは第四学年(フォース)のみ。サリアはまだ第一学年(ファースト)だから、まだ怪我もしていない状態の可能性はある。
学生寮の中。
喧騒に満ちているのはいつものことだが、今日は昇格試験で大半が寮を出払っているために、静けさに満ちた時間が多かったというのに、陽が高くなるにつれ、いつものような……いや、いつもより騒がしい音が鼓膜を震わす。
アルジスは本を読む手を止め、カーテンの閉まった窓を開けて外の様子を伺う。一応幻術で姿を視認できないようにさせてはいるが、そのような配慮も必要ないのではないかと思えるほど、眼下では目まぐるしく生徒たちが走り回っている。本当に、どうしたというのか。
事態の把握のためだと考え、生徒たちの会話が聞こえるように魔法を行使してみる。そうして聞いた内容に、アルジスは驚愕した。
「えっ、嘘!? フォース試験者全滅したの?」
「らしいぜ。野生動物が魔法や薬によって強化されて、教師でも太刀打ち出来ないくらいに凶暴化してるらしい。重症を負った連中の救護に、予定より法術使いの生徒の人数増やして法術行使の協力要請したらしいけど、意識不明の奴が二桁超えたってよ」
「怖ぇな、それ。他の学年の試験はどうなんだよ」
「それが、例年よりずっと人数が少ないらしい。試験の途中に負傷した奴が多くて、法術使いが次々と力の行使のしすぎで倒れてるから、治療も満足にできてない」
「どーすんのよ!」
「先生たちが、試験受けてない法術齧ったやつとかにも協力要請しはじめたって。俺達も、軽傷の連中の手当のための道具運びとかで呼ばれるかもよ」
――――サリアは、無事なのか。
不安に襲われるが、彼らの話を聞く限り全滅したのは第四学年(フォース)のみ。サリアはまだ第一学年(ファースト)だから、まだ怪我もしていない状態の可能性はある。