聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 彼らの目を介して見る外の様子は、惨憺たる光景だった。生徒たちが鮮血に塗れた服を纏って地に伏せって、その周りで必死になって介護や治療を試みる教師や生徒の姿がある。


 並の者なら顔を背けるだろうその有様も、アルジスは眉をひそめ、視線を細める程度で逸らしはしない。それがどれほど異様なことであるか、理解しているかは定かではないが。


 移り変わる水鏡の光景を見つめながら、記憶する少女の姿を探す。


 無音の映像は、表情や行動からしか状況を読み取れない。加えて、今回は上空のみの探査しか出来ない。鳥達を危険な魔法力溢れる場の近くまで行かせるわけにも行かないから、低空飛行も限度がある。ゆえに、表情の読み取れない距離での映像はあまりにも人探しをするには心許なかった。


 それを考えると、心配だったとはいえ浅はかな行動をしてしまったかとも思ったが、それ以上に彼女の安否の確認をしたい思いが強く、鳥達の意識の解放をすることができない。


 衝動的な行動の後始末をどうしようかと頭の片隅で考えながら、アルジスは水鏡に視線を落とす。


 やがて、他のエリアとは違って然程事態が悪化していない様子のエリアを見つけ、アルジスはその場を注視する。


 そこに、風に揺れる見事な金髪を見つけ、彼は思わず、安堵の息をついた―――…。
< 130 / 132 >

この作品をシェア

pagetop