聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「くすぐったいよ、ルーナ」


 歌が止み、少女が白猫を抱き上げてその猫を倣うように頬ずりすれば、機嫌がよい声で再び鳴いた猫の頭を撫で、彼女は椅子から立ち上がる。


 壁の一角を占領するように置かれた寝台に、白猫を下ろし、自らもすらりとした肢体を滑らせるようにして横たわった少女の胸元まで、白猫は布団を引き上げる。


 柔らかな光が差し込む中、傍らでうずくまった白猫を撫でた後、自らの体も疲れた体を癒そうとしていたのだろう、さほど時間のかからないうちにまどろみの海に沈み始めた意識が、彼女は目蓋を閉ざしたときには手放された。




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