聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~

 今より一千五百年前。


 聖女と歌われる一人の娘が誕生した。名を、リジュエという。


 聖女リジュエは、神の子と呼んでも構わないほどの強大な力を得ていた。祈りは天候をも変え、人の命すら救うという―――。


 しかしあるとき、彼女は地の果てまで一人の青年と逃亡した。


 青年―――アーレスは、豊富な知識と剣に関しては天賦の才を持つ良家の三男だった。だが、聖女と謳われる彼女と恋仲だと知られれば、結ばれぬうちに離されてしまう。その恐れから手を取り合って逃げたのだろうと歴史には記されている。


 地の最果て……とまでは行かずとも、旅の道中多くの仲間を得ながら二人の故郷から遠く離れた当時未開の地だったシルヴェリア大陸に、聖女リジュエによってヴェーネ、フェルム、ゼシア、カナンの四王国は築かれ、各国に剣、杖、弓、珠といった『神器』が安置された。数年して生まれたアーレスとリジュエの子らは、それぞれ四王国と同じ名を冠し、四方の地にありし王国の君主として、命尽き果てるまで王国を繁栄へと導いたという。

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