聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
月光が煌々と学院の前に広がった平原に生えた野草たちに光を注いでいる。昼間なら鮮やかな若葉や黄緑色を纏うそれらは、夜の落ち着いた銀の光の下ではその鮮やかさをやや失って、代わりに緑青色の落ち着いた色でひっそりと揺れている。
その中に、少女は見つけた。―――鮮やかな、銀色を。
「……男の子…」
耳を隠す程度の長さで無造作に切られた銀糸の髪が、水場を通ってきたのか、やや冷たさを帯びた風が玩ぶ。
すぅ、と小さな寝息を立てる口を彩る桃色が、さながらもぎ取られるばかりの桜桃を思い起こさせる。
通った鼻梁。その少し上で綺麗な弧を描く長い睫毛―――。
色素というものが抜け落ちたと思うほどの肌を隠す襟の詰まった衣服から覗く瑞々しくしなやかな手足。
まるで一流の彫刻師が生涯を掛けて作り上げた傑作のような、見目麗しい容貌を携えたその麗人を、少女は呆然と見下ろしていた。
その中に、少女は見つけた。―――鮮やかな、銀色を。
「……男の子…」
耳を隠す程度の長さで無造作に切られた銀糸の髪が、水場を通ってきたのか、やや冷たさを帯びた風が玩ぶ。
すぅ、と小さな寝息を立てる口を彩る桃色が、さながらもぎ取られるばかりの桜桃を思い起こさせる。
通った鼻梁。その少し上で綺麗な弧を描く長い睫毛―――。
色素というものが抜け落ちたと思うほどの肌を隠す襟の詰まった衣服から覗く瑞々しくしなやかな手足。
まるで一流の彫刻師が生涯を掛けて作り上げた傑作のような、見目麗しい容貌を携えたその麗人を、少女は呆然と見下ろしていた。