聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
考えることを拒絶したように体の動きを止めたサリアに、少年はいぶかしげな顔をする。そして、自分の視界の端で、何かが動くのを見た。
反射的に懐剣を持つ手で振り返りざまに斬りかかり、視界にいれたそれに目を瞬かせる。
「………ね、こ?」
呆然とその言葉を口にした少年に、その美しい純白の毛の下にある肌を撫ぜた懐剣によって傷つけられた猫は、その毛が血色に染め上がっているというのに、よろよろと起き上がる。
先ほどと同様少年に飛びかかろうとするが、しかしその前に力尽き、少年の足下でその身体を横たわらせた。
「………」
呆然とする少年の目の端で、少女が動く。
「ルーナ!」
名前らしきものを呼び、猫を抱え上げた少女を見て、少年はようやく猫の名がルーナであることを理解した。
「ルーナ、ルーナ! しっかりして」
泣きそうな顔で自らの着ていた服を引き裂く少女に、少年は瞠目する。細く長く引き裂いたその布を、丁寧に猫の患部をくるんだ少女は、少年に向き直り、手を振り上げた。
――――ぱんっ。
綺麗な音を立てた少女の張り手は、しかしそれほど痛くない。だが、少女に向き直った少年は、ぼろぼろと涙を零しながらこちらをにらむ少女に、目を見開いた。
反射的に懐剣を持つ手で振り返りざまに斬りかかり、視界にいれたそれに目を瞬かせる。
「………ね、こ?」
呆然とその言葉を口にした少年に、その美しい純白の毛の下にある肌を撫ぜた懐剣によって傷つけられた猫は、その毛が血色に染め上がっているというのに、よろよろと起き上がる。
先ほどと同様少年に飛びかかろうとするが、しかしその前に力尽き、少年の足下でその身体を横たわらせた。
「………」
呆然とする少年の目の端で、少女が動く。
「ルーナ!」
名前らしきものを呼び、猫を抱え上げた少女を見て、少年はようやく猫の名がルーナであることを理解した。
「ルーナ、ルーナ! しっかりして」
泣きそうな顔で自らの着ていた服を引き裂く少女に、少年は瞠目する。細く長く引き裂いたその布を、丁寧に猫の患部をくるんだ少女は、少年に向き直り、手を振り上げた。
――――ぱんっ。
綺麗な音を立てた少女の張り手は、しかしそれほど痛くない。だが、少女に向き直った少年は、ぼろぼろと涙を零しながらこちらをにらむ少女に、目を見開いた。