聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
誰もが食事を終え、出ていった食堂内。
全員が立ち去るまでその場に留まり続けていたサリアは、すっと座っていた椅子から腰を上げて、懐から大判のハンカチーフを取り出した。
それをばっと広げて、多くの生徒たちが食べ終えても、まだ十人前はあるだろう調理された食べ物を、ハンカチーフの順番に載せていく。
手にとって食べられる軽食ばかりしか載せられないのが痛いが、それでも十分な量が載り、サリアはそっとハンカチーフの中に収めたそれらがひとかけらも零れないように丁寧に包み始める。
そうして扉を押し開けて大事に抱えた包みを、サリアは落とさないように慎重に歩きだした―――…。
♪//♪//♪//♪//♪//♪
押し開けた扉の向こうで、出会った当初より和らいだ光を称えた瞳が細められる。
「おかえり。―――サリア」
低いのに、どこか甘さを含んだ声が、自らの名を、呼ぶ。
「ただいま、アルジス」
出会いより――――― 十日。
ふわりと微笑んだ少年―――アルジスに、かつて向けられた敵意は微塵もない。
今向けられているのは、信頼に溢れた優しい眼差しで、それは彼が自分を認めてくれたという証だった。
全員が立ち去るまでその場に留まり続けていたサリアは、すっと座っていた椅子から腰を上げて、懐から大判のハンカチーフを取り出した。
それをばっと広げて、多くの生徒たちが食べ終えても、まだ十人前はあるだろう調理された食べ物を、ハンカチーフの順番に載せていく。
手にとって食べられる軽食ばかりしか載せられないのが痛いが、それでも十分な量が載り、サリアはそっとハンカチーフの中に収めたそれらがひとかけらも零れないように丁寧に包み始める。
そうして扉を押し開けて大事に抱えた包みを、サリアは落とさないように慎重に歩きだした―――…。
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押し開けた扉の向こうで、出会った当初より和らいだ光を称えた瞳が細められる。
「おかえり。―――サリア」
低いのに、どこか甘さを含んだ声が、自らの名を、呼ぶ。
「ただいま、アルジス」
出会いより――――― 十日。
ふわりと微笑んだ少年―――アルジスに、かつて向けられた敵意は微塵もない。
今向けられているのは、信頼に溢れた優しい眼差しで、それは彼が自分を認めてくれたという証だった。