聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「む、無茶に決まってるでしょう!」


 拳を固めて力説するサリアに、アルジスは笑う。


「無茶かどうかはやってみなければ分からない。案外簡単にことが済むかもしれないしな」


「だから何のためにそんなこと―――」


「サリアの力を具現できる特殊な職が、俺の古びた知識ではもう思いつかない」


「………私の、ため?」


 怒号を飛ばしていた先ほどの自分をあっさりと忘れたかのごとく、呆けた声でそう聞き返したサリアに、アルジスは笑う。


「………世話になっているから、少しでも借りを返したい。そういうものを作るのは、あまり好きではないんだ」


 そういったものを長く借りている間に、互いのどちらかが不幸に見舞われたら、感謝することも出来ないからな―――。


 続けられた言葉に、過去にそういったことがあったのだろうかと思ったのは、彼の表情が沈鬱としていたからだ。


 確信に近い推測を言葉にすることもできず、困ったように視線をさまよわせたサリアに、アルジスは言う。


「………三つ目の理由も解決して、後は自分に合った魔法使いとしてのタイプを見つけるだけだ。中途なままでいるのは、サリアも嫌だろう?」


 アルジスの言葉に、思わず素直に頷くという反応を返してから、サリアは懐を探り、掌に四つそれぞれ違った色を纏った石を広げた。


 
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