聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
物音を立てないように気を使ってもやはり限界がある。
深夜の図書館。頼りになるのは持ち込んだ洋燈(ランプ)のみで、がさごそとそこらを漁っているうちに、アルジスたちが踏み込んだのは、ファーストであるサリアが入るのは禁域とされる、セカンドからが許された場所だった。
さすがにこれはまずいのでは、と青くなるサリアの横で、平然とセカンドの本を手にとって探っているアルジスは、お望みのものが無かったのか、更にサード以上の場所へと踏み込もうとする。
「あ、アルジス! ダメよ、流石にこんなこと! だいたい、私はファーストだからこんな場所入った途端―――あれ?」
ふと、言おうとしていた言葉が頭に引っ掛かり、首を傾げたサリアは、暫し逡巡して、嫌な予感が駆け抜ける脳裏の思考の機能を一旦停止させ、青ざめた顔で仰いだ先に見た端麗な彼の人に問いかける。
「あ、アルジス。………警報が鳴らないのは、どうしてだと思う?」
自分の学年に相応しくないというのに、更なる知識の工場を目指して読むことを許されていない自身の学年に合わない書物を求めて図書館の奥へ踏み込まないように、各学年が許された範囲ごとに幾つかの魔法の仕掛けが施されている。
サリアの記憶には、ファーストとセカンドの境目となる階段に、ファーストが踏み込んだ場合警報がなりありとあらゆる飛び道具あるいはレーザーが飛んでくる―――事態に見舞われた憐れなファーストの少年が、意気消沈して厳罰注意を受けるために校長室へ連行されていったというものがある。
あれを思い起こして真っ青になったのだが、アルジスが平然と本を繰っている傍でびくびくしているサリアがセカンドだと認識しているかのように、まったく警報が鳴らないし飛び道具諸々が飛んでくる気配もない。これはどうしたことか。
訝しく思うサリアに、アルジスは平然とした顔のまま、さらりと答えた。
「この図書館内の警備システムが作動しないように強力な幻覚空間を作ってる」
……思わず唖然とした顔でアルジスを見上げるサリアに、アルジスは自分を軸にして直径三メートル程度のものだが、と宣ってきた。
深夜の図書館。頼りになるのは持ち込んだ洋燈(ランプ)のみで、がさごそとそこらを漁っているうちに、アルジスたちが踏み込んだのは、ファーストであるサリアが入るのは禁域とされる、セカンドからが許された場所だった。
さすがにこれはまずいのでは、と青くなるサリアの横で、平然とセカンドの本を手にとって探っているアルジスは、お望みのものが無かったのか、更にサード以上の場所へと踏み込もうとする。
「あ、アルジス! ダメよ、流石にこんなこと! だいたい、私はファーストだからこんな場所入った途端―――あれ?」
ふと、言おうとしていた言葉が頭に引っ掛かり、首を傾げたサリアは、暫し逡巡して、嫌な予感が駆け抜ける脳裏の思考の機能を一旦停止させ、青ざめた顔で仰いだ先に見た端麗な彼の人に問いかける。
「あ、アルジス。………警報が鳴らないのは、どうしてだと思う?」
自分の学年に相応しくないというのに、更なる知識の工場を目指して読むことを許されていない自身の学年に合わない書物を求めて図書館の奥へ踏み込まないように、各学年が許された範囲ごとに幾つかの魔法の仕掛けが施されている。
サリアの記憶には、ファーストとセカンドの境目となる階段に、ファーストが踏み込んだ場合警報がなりありとあらゆる飛び道具あるいはレーザーが飛んでくる―――事態に見舞われた憐れなファーストの少年が、意気消沈して厳罰注意を受けるために校長室へ連行されていったというものがある。
あれを思い起こして真っ青になったのだが、アルジスが平然と本を繰っている傍でびくびくしているサリアがセカンドだと認識しているかのように、まったく警報が鳴らないし飛び道具諸々が飛んでくる気配もない。これはどうしたことか。
訝しく思うサリアに、アルジスは平然とした顔のまま、さらりと答えた。
「この図書館内の警備システムが作動しないように強力な幻覚空間を作ってる」
……思わず唖然とした顔でアルジスを見上げるサリアに、アルジスは自分を軸にして直径三メートル程度のものだが、と宣ってきた。