聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「サリア、駄目だ! それは、その職業は―――!」
『……大丈夫、君なら出来る―――』
アルジスの静止する声と、声しか自らに届けなくとも、大丈夫だと背を押してくれる声。
音の渦に、呑まれる―――…
「―――フィア リー トゥ レィ ツェ ……」
唇に乗る音が、歌となって宙に漂い―――…
手のひらの上で、ぽう、と光が浮かんだ。
大きく目を見開いて硬直するアルジスが二の句も告げないでいるうちに、優しい声が遠ざかる。
『そう。それでいい。………これで、君はもう魔法を使えるよ―――』
聞こえなくなった声の気配が遠ざかったのを感じると、サリアは呆然と立ち尽くすアルジスに声をかけた。
「アルジス?」
どうしたの、と聴こうとした途端、アルジスの体が力を失ったように崩れ、本棚にもたれ掛かる。
「アルジス!?」
思わず大声を上げて駆け寄るサリアに、アルジスは小さなつぶやきをこぼした。
「――――使えなかったんだ」
「え……?」
首を傾げたサリアは、一拍おいて噛み締めるように言葉を零したアルジスから伝えられた事実に、完全に凍りついた。
「―――音律士(クルーナー)は、サリアのそのタイプを使えたのは、たった一人……
聖女リジュエ以外今まで誰にも、使えなかったんだ……」
『……大丈夫、君なら出来る―――』
アルジスの静止する声と、声しか自らに届けなくとも、大丈夫だと背を押してくれる声。
音の渦に、呑まれる―――…
「―――フィア リー トゥ レィ ツェ ……」
唇に乗る音が、歌となって宙に漂い―――…
手のひらの上で、ぽう、と光が浮かんだ。
大きく目を見開いて硬直するアルジスが二の句も告げないでいるうちに、優しい声が遠ざかる。
『そう。それでいい。………これで、君はもう魔法を使えるよ―――』
聞こえなくなった声の気配が遠ざかったのを感じると、サリアは呆然と立ち尽くすアルジスに声をかけた。
「アルジス?」
どうしたの、と聴こうとした途端、アルジスの体が力を失ったように崩れ、本棚にもたれ掛かる。
「アルジス!?」
思わず大声を上げて駆け寄るサリアに、アルジスは小さなつぶやきをこぼした。
「――――使えなかったんだ」
「え……?」
首を傾げたサリアは、一拍おいて噛み締めるように言葉を零したアルジスから伝えられた事実に、完全に凍りついた。
「―――音律士(クルーナー)は、サリアのそのタイプを使えたのは、たった一人……
聖女リジュエ以外今まで誰にも、使えなかったんだ……」