聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「………随分と素晴らしい魔法使いを仲間に率いれたようですね、兄上」
耳障りの良い凛とした声が、大広間にやけに大きく響く。その声に答えるように、ひとつ歩み出た青年が朗らかな笑みを唇に称えてながら口を開いた。
「どうだ、我が弟よ。 私が五年掛けて磨き上げた精鋭は?」
もう一度首を一蹴させて、彼は苦味の含んだ笑みを浮かべる。
「残念ながらいい気はしませんよ。それと、無理をしてまでわたしを弟と呼ばなくても構いませんが」
少年の丁寧な口調ではあるものの大してこの状況におびえていない様子に、青年の瞳に怒りが燃え滾った。憎悪と怨恨で煮え滾った瞳がまっすぐ少年へと突き刺さる。だが、少年はさして気にした様子も無く、先ほどまでの冗談めいた―――否、子供染みた笑顔を表情から消し、無に満ちた顔で青年を見つめた。
「何度も言うようですが、わたしは王になる気など毛頭ありません。兄上がなりたいと仰るなら、喜んで王位を差し上げましょう」
その言葉に、青年が喉をくつくつと喉を鳴らした。その笑い声は大広間の中を反響し、発生源は分かっているのに、幾重にも重なって聞こえる。
「お前がそう言っても、神器はそれを認めない。結局、お前を殺し、神器に私を認めさせるほかに、道など無いわ!」
少年は黙って耳を貸す。―――不思議な気分だ。兄に殺すと明言されているにも関わらず、感情が揺さぶられもしない。それはまさに、兄弟である二人の間の溝の深さを明確に示していた。
耳障りの良い凛とした声が、大広間にやけに大きく響く。その声に答えるように、ひとつ歩み出た青年が朗らかな笑みを唇に称えてながら口を開いた。
「どうだ、我が弟よ。 私が五年掛けて磨き上げた精鋭は?」
もう一度首を一蹴させて、彼は苦味の含んだ笑みを浮かべる。
「残念ながらいい気はしませんよ。それと、無理をしてまでわたしを弟と呼ばなくても構いませんが」
少年の丁寧な口調ではあるものの大してこの状況におびえていない様子に、青年の瞳に怒りが燃え滾った。憎悪と怨恨で煮え滾った瞳がまっすぐ少年へと突き刺さる。だが、少年はさして気にした様子も無く、先ほどまでの冗談めいた―――否、子供染みた笑顔を表情から消し、無に満ちた顔で青年を見つめた。
「何度も言うようですが、わたしは王になる気など毛頭ありません。兄上がなりたいと仰るなら、喜んで王位を差し上げましょう」
その言葉に、青年が喉をくつくつと喉を鳴らした。その笑い声は大広間の中を反響し、発生源は分かっているのに、幾重にも重なって聞こえる。
「お前がそう言っても、神器はそれを認めない。結局、お前を殺し、神器に私を認めさせるほかに、道など無いわ!」
少年は黙って耳を貸す。―――不思議な気分だ。兄に殺すと明言されているにも関わらず、感情が揺さぶられもしない。それはまさに、兄弟である二人の間の溝の深さを明確に示していた。