聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
2.動揺
第一楽章
落ちこぼれの魔法使い―――…。
四年もの歳月を経ても、セカンドに昇格出来ないサリアを、年下だとはいえ見下していた者たちはその日、目の当たりにしたものに目を疑った。
遠く離れた的に、なんらか魔法を当てるという実技だった。目測を見誤れば的に当たる前に地に沈んだりするのだが、はっきり言って初歩的な魔法である。
しかし、魔法の呪文を唱えたところで一かけらも媒介や手の先から魔法が生み出せないサリア以上に出来ないものはいなかったため、サリアが前に出たとき、たいていのものはにやけた表情を隠しもしなかった。
そんな目を向けられて居心地が悪いはずがないのに、サリアは幾らか深呼吸したあと、媒介を組み込んだネックレスを右手で握り締め、左手を前に突き出してそっと口を開いた。
「セイ ディア ソル ネゥ…」
ルーナと言う猫を肩に乗せ、何故か歌いだしたサリアに最初は嘲笑を向けた者もいた。しかし、彼女の手から光球が生まれ、レーザーのように的へと直進したのを見て、ある者は笑顔のまま硬直し、またある者は持っていた媒介をぼとりと地に落とし―――とりあえず、それぞれ何らかの衝撃を受けて反応を示す。
「う、嘘だろ…?」
「み、見間違いよ! きっと!」
そんな囁きが交わされる中、授業を行なっていた教師が動揺で足を滑らせ尻餅をつき、慌てて立ち上がる。
「あ、後は自習だ! サリア=セレシード! こちらへ来なさい!」
「………はい」
想定していたとはいえ、あまりにも予測しすぎていた事態どおりにことが進んで、サリアは思わずため息をついた―――…。
四年もの歳月を経ても、セカンドに昇格出来ないサリアを、年下だとはいえ見下していた者たちはその日、目の当たりにしたものに目を疑った。
遠く離れた的に、なんらか魔法を当てるという実技だった。目測を見誤れば的に当たる前に地に沈んだりするのだが、はっきり言って初歩的な魔法である。
しかし、魔法の呪文を唱えたところで一かけらも媒介や手の先から魔法が生み出せないサリア以上に出来ないものはいなかったため、サリアが前に出たとき、たいていのものはにやけた表情を隠しもしなかった。
そんな目を向けられて居心地が悪いはずがないのに、サリアは幾らか深呼吸したあと、媒介を組み込んだネックレスを右手で握り締め、左手を前に突き出してそっと口を開いた。
「セイ ディア ソル ネゥ…」
ルーナと言う猫を肩に乗せ、何故か歌いだしたサリアに最初は嘲笑を向けた者もいた。しかし、彼女の手から光球が生まれ、レーザーのように的へと直進したのを見て、ある者は笑顔のまま硬直し、またある者は持っていた媒介をぼとりと地に落とし―――とりあえず、それぞれ何らかの衝撃を受けて反応を示す。
「う、嘘だろ…?」
「み、見間違いよ! きっと!」
そんな囁きが交わされる中、授業を行なっていた教師が動揺で足を滑らせ尻餅をつき、慌てて立ち上がる。
「あ、後は自習だ! サリア=セレシード! こちらへ来なさい!」
「………はい」
想定していたとはいえ、あまりにも予測しすぎていた事態どおりにことが進んで、サリアは思わずため息をついた―――…。