聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「フィニの言うとおりだ。魔法の行使の仕方が人と違ったくらいで、驚くのはおかしい」
同意を示したのは、フィニアの右隣に黙って控えた長身の青年――まだ19のはずだが、寡黙であり落ち着きのある雰囲気から、20代に見間違えられることの多いナロン=ウィンルーフで、入学して立て続けに昇格試験に合格したにもかかわらず、フィフスになってから一度も卒業試験を受けていない変わり者だ。
まあ、それを言うのならフィニアも昇格試験は一年に三度あるにも関わらず一年に一度しか受けていないという事実があるから、彼一人が変わり者と呼ぶのはおかしいのだが―――…。
「きゃっ…」
「まぁ、何にしても良いことじゃねぇか! サリアがようやくセカンド昇格できるかもしれねぇってことだろ! これで落ちこぼれっていう腹立つあだ名も返上だなっ」
「………その前に、サリアを放しなさい、ヴォル」
にかりと邪気のない笑顔で笑ってサリアを後ろから抱きしめたヴォル―――ヴォルクス=クルーシーは六人の中でもムードメーカーと呼ばれる存在なのだが、スキンシップが激しくいつもフィニアの注意を受けている。
そうして、そのフィニアが不機嫌になる前に、サリアをヴォルの腕から救うのはいつも―――。
「でっ」
「………まったく。いつものことながら学習しない奴だな」
呆れた調子でヴォルの腕を引きはがしてサリアを抱き寄せ、嘆息した彼の人に、サリアは苦笑しながらも礼を述べた。
「ありがとう、ナロン」
「いや、気にするな」
すぐにサリアを放してくれる大きな腕を再び組み、ナロンは深く息を吐いた。
同意を示したのは、フィニアの右隣に黙って控えた長身の青年――まだ19のはずだが、寡黙であり落ち着きのある雰囲気から、20代に見間違えられることの多いナロン=ウィンルーフで、入学して立て続けに昇格試験に合格したにもかかわらず、フィフスになってから一度も卒業試験を受けていない変わり者だ。
まあ、それを言うのならフィニアも昇格試験は一年に三度あるにも関わらず一年に一度しか受けていないという事実があるから、彼一人が変わり者と呼ぶのはおかしいのだが―――…。
「きゃっ…」
「まぁ、何にしても良いことじゃねぇか! サリアがようやくセカンド昇格できるかもしれねぇってことだろ! これで落ちこぼれっていう腹立つあだ名も返上だなっ」
「………その前に、サリアを放しなさい、ヴォル」
にかりと邪気のない笑顔で笑ってサリアを後ろから抱きしめたヴォル―――ヴォルクス=クルーシーは六人の中でもムードメーカーと呼ばれる存在なのだが、スキンシップが激しくいつもフィニアの注意を受けている。
そうして、そのフィニアが不機嫌になる前に、サリアをヴォルの腕から救うのはいつも―――。
「でっ」
「………まったく。いつものことながら学習しない奴だな」
呆れた調子でヴォルの腕を引きはがしてサリアを抱き寄せ、嘆息した彼の人に、サリアは苦笑しながらも礼を述べた。
「ありがとう、ナロン」
「いや、気にするな」
すぐにサリアを放してくれる大きな腕を再び組み、ナロンは深く息を吐いた。