聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「そんなことより、早く移動しましょう。こんなところではくつろぐことも出来ないわ」


「う、うん」


 フィニアに促され、その場からようやく重い腰を上げるように動き出した一同は、女子寮の方へと足を運ぶ。


「にしても、こうやって食事以外のときに集まるのは久々だねぇ」


 エミスが朗らかに笑いながらそう言えば、ヴォルが深く頷いた。


「だよなぁ。エミスは法術専攻を選んで別棟の学舎にいることが多いし、俺とフェイトはサードで一緒にいること多いけど、他の三人全員違う学年だし」


「一日に二度顔を合わせるくらいで十分よ、あなたとは。常に傍にいるフェイトが哀れだわ」


「……フィニ、いつも思うんだけど、なんで俺にだけそんな辛辣なわけ」


「自分の所業を振り返りなさい」


 淡々と告げられる言葉に、いったい何が悪いのかと歩きながら真剣に考え出したヴォルは沈黙してしまったので、いつものような和やかな会話が続かない。


「あ、着いた!」


 それでも学舎からそれほど離れていない寮に着けば、エミスがそう声を上げて朗らかに笑った。逸早く寮の中へと入っていくエミスを追いかけるように、サリアたちもゆっくりと後を追う。
< 54 / 132 >

この作品をシェア

pagetop