聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「……これは……確かに、特殊ね」


 口を開いたフィニアの顔も、いつものような無表情が崩れ、戸惑いの色が僅かながらにある。


「う、歌って魔法を使えるなんて………」


「教師も今までに見ないものに戸惑うはずだね…」


 エミスはそう零して、思わずサリアの手を凝視し、フェイトは驚きつつも逸早く冷静さを取り戻しつつあった。


「………い、いったいどういうことだよ…?」


 ヴォルの疑問符つきの言葉に、涼やかに言葉を添えたのはナロンだった。


「――――音律士(クルーナー)、か」


「ナロン、知っているの?」


 ナロンが零した言葉に、反応を示したフィニアが問いを投げかける。ナロンはサリアを見つめたまま、静かに言葉を零す。


「………空気や水などに常に含まれている元素の音を組み立てることで、魔法を行使する魔法使いのことだ。………聖女リジュエ以外、今まで誰もそんな魔法使いは生まれなかった」


 付け足されるように付随された言葉に、息を呑んだヴォルやエミスに遅れ、フィニアがなるほど、と静かに言葉を漏らす。


「それで……サリアは呼び出されたのね」


 リジュエの再来とも呼ぶべき、新たな音律士(クルーナー)となったサリアに、驚愕しない教師などいない。


 まぁ、その存在を知らずとも、サリアの特殊な魔法の行使を見れば、驚いてしまって学長に伝えるのも無理はないが。

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