聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 沈黙を破りやってきたのは騒音だった。


 兄が腰に据えていた剣を躊躇い無く抜き放ち、それと同時に鎧を纏った幾万もの兵が少年に襲い掛かる。


 逸早くやってきたリーチの長い槍の切っ先を視界に捉えた少年は、魔力を床に爆発させ、その威力で宙へと飛び上がり、初撃を回避するも、その動きを見て追いかけるように弓と銃を操る兵士たちが一斉に上空へと攻撃を繰り出した。


 だがその攻撃を半ば予想していたのか、少年の表情に焦りの色は皆目無く、矢を切り払い、弾丸を剣で弾き飛ばす。すべてを防ぎきった油断を狙ってなのか、突然悪寒を覚える殺気が背後に現れ、彼は振り返りざまに左腕に仕込んでいた小型のナイフで初撃を受け止め、殺意を漲らせた瞳を称えた兄から逃れようと、右手に握られた剣を振るった。わずかな手ごたえはあったものの、やはり防護服を下に着用していたようで、彼の放った剣戟は絹を裂き、防護服に浅い傷をつけただけだった。
< 6 / 132 >

この作品をシェア

pagetop