聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「……それじゃあ、相談してみるね」
懐から取り出した青い液体を、指先につけてからフィニアの部屋の扉に六角星を描き、丸で囲む。すぅっと扉に溶けるように消えていったそれを確かめてから、サリアはそっと扉を押し開いた。
「お、父さん…?」
遠慮がちに掛けた扉の先、見つけたのはぐったりと書類が山となって積まれた机に、懐く男の姿がある。
しかし、もう一度呼びかけると、ぴくりと耳が動いてのっそりと体が持ち上がり、サリアを視界に映した男は、数秒後ばっと立ち上がって書類の山を踏み越えてサリアに向かってくる。
「サリアッ!」
「きゃっ……」
ぎゅっと力強く抱きしめられ、すりすりと猫が主にするような頬ずりをされ、やがてふにゃりと年齢より幼く見える笑顔を向けられる。
「どうしたんだ、急に? いつも呼んでも迷惑になるからって来てくれないのに」
親馬鹿全開でサリアを可愛がる姿を見て、背後に控えていた五人は思わず嘆息した―――…。
硬い髪質をした短い茶色の髪、綺麗というよりは、精悍といったほうが良い顔立ちは凛々しいが、若干幼く見える笑顔を浮かべる度に細められる瞳の色は、サリアが容姿の中で唯一彼から譲られた若葉色―――…。
ゼヘレム学院理事長、ゼフロス=セレシードが、いつものように目一杯愛娘を可愛がり、堪能するまで数刻の時を要したことは必然だった。
懐から取り出した青い液体を、指先につけてからフィニアの部屋の扉に六角星を描き、丸で囲む。すぅっと扉に溶けるように消えていったそれを確かめてから、サリアはそっと扉を押し開いた。
「お、父さん…?」
遠慮がちに掛けた扉の先、見つけたのはぐったりと書類が山となって積まれた机に、懐く男の姿がある。
しかし、もう一度呼びかけると、ぴくりと耳が動いてのっそりと体が持ち上がり、サリアを視界に映した男は、数秒後ばっと立ち上がって書類の山を踏み越えてサリアに向かってくる。
「サリアッ!」
「きゃっ……」
ぎゅっと力強く抱きしめられ、すりすりと猫が主にするような頬ずりをされ、やがてふにゃりと年齢より幼く見える笑顔を向けられる。
「どうしたんだ、急に? いつも呼んでも迷惑になるからって来てくれないのに」
親馬鹿全開でサリアを可愛がる姿を見て、背後に控えていた五人は思わず嘆息した―――…。
硬い髪質をした短い茶色の髪、綺麗というよりは、精悍といったほうが良い顔立ちは凛々しいが、若干幼く見える笑顔を浮かべる度に細められる瞳の色は、サリアが容姿の中で唯一彼から譲られた若葉色―――…。
ゼヘレム学院理事長、ゼフロス=セレシードが、いつものように目一杯愛娘を可愛がり、堪能するまで数刻の時を要したことは必然だった。