聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「………しかし、音律士(クルーナー)とは、驚きましたね」


「そうだな……。まさか蓋を開けてそんなどでかいものを持ってたとは、俺も驚いた」


 そう言いながら、背もたれに体をあずけて顔を上向けたゼフロスは、やがて静かに零す。


「まあ、分かってしまったことは今更どうしようもねぇ。ただ、少し引っ掛かるんだよ」


 何が、とは言わなかった。リアンも、彼の考えていることが、自分の考えていることに重なると思っていたから。


 それでもリアンは沈黙を通す。思考を巡らせる主の邪魔に、ならぬように。


 静寂に包まれた空間、リアンの見守る中でゼフロスは、腹の虫が鳴るまで、仰いだ天井をじっと睨みつけたまま微動だにしなかった―――…。


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