聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「……平気か、フィニア」
低く、少し掠れた声が囁かれるような声量で届いて、フィニアは平気だと告げるために喉を震わせる。
「えぇ、大丈夫」
ゆっくりと囚われた腕から解放され、フィニアは顔を上げる。そこに、見慣れた薄い氷のような瞳があった。
「………助かったわ、ナロン」
「……いや」
短く応答したナロンは、すぐさま生徒たちの方へ視線を向ける。
「………フィニアのことだから、おそらくサリアの悪言を吐いていたんだとは思うが」
サリアが音律士(クルーナー)として覚醒して以来、フィニアが率先して噂の発生源を叩いていることを理解しているナロンは、瞳を生徒に向けたまま黒槍の先端―――刃となっている切っ先を、彼らの鼻先に突き付けた。
「……女一人に寄って集って魔法を放つなど、男のやることではないな」
反省を促してやろう、とナロンが告げたと同時、放たれた魔力の球が生徒たちを急襲する。
「うわああぁぁぁっ!」
―――御仕置き程度ではない魔力の波動に、流石にまずいのではと顔を上げたフィニアだったが、容赦のない攻撃を平然と見つめているナロンに、沈黙する。
「………二度と悪言を流すことは許さん」
そうして再び放たれた炎が、生徒たちに降伏の声をあげさせ―――。
魔法による加護で傷一つない学院の廊下は、さきほどの喧騒を完全に忘れ去ったかのような静寂を取り戻していた―――…。
低く、少し掠れた声が囁かれるような声量で届いて、フィニアは平気だと告げるために喉を震わせる。
「えぇ、大丈夫」
ゆっくりと囚われた腕から解放され、フィニアは顔を上げる。そこに、見慣れた薄い氷のような瞳があった。
「………助かったわ、ナロン」
「……いや」
短く応答したナロンは、すぐさま生徒たちの方へ視線を向ける。
「………フィニアのことだから、おそらくサリアの悪言を吐いていたんだとは思うが」
サリアが音律士(クルーナー)として覚醒して以来、フィニアが率先して噂の発生源を叩いていることを理解しているナロンは、瞳を生徒に向けたまま黒槍の先端―――刃となっている切っ先を、彼らの鼻先に突き付けた。
「……女一人に寄って集って魔法を放つなど、男のやることではないな」
反省を促してやろう、とナロンが告げたと同時、放たれた魔力の球が生徒たちを急襲する。
「うわああぁぁぁっ!」
―――御仕置き程度ではない魔力の波動に、流石にまずいのではと顔を上げたフィニアだったが、容赦のない攻撃を平然と見つめているナロンに、沈黙する。
「………二度と悪言を流すことは許さん」
そうして再び放たれた炎が、生徒たちに降伏の声をあげさせ―――。
魔法による加護で傷一つない学院の廊下は、さきほどの喧騒を完全に忘れ去ったかのような静寂を取り戻していた―――…。