聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 後、五日に迫った学年昇格試験。なんとか元素を歌として組み立てることは出来るようになってきた。


 手探り状態でこそあったものの、耳を澄ませば聞こえてくる音を、歌を歌い、頭で成し得たいことを想像しながら媒介に意識を注ぐことで引き寄せればいいのだと、理解したから。


 後はセカンドに上がるため、どんな実技の試験にも対応できるよう、訓練を積むだけ。


 ――――そこまでは、いいのだけれど。


(……学年が上がったら、基本的知識の講義に加えて専門知識の講義が加わる……)


 魔法史、魔法薬学、魔法生物に関する知識などなど。そういった基本知識は更に詳しいものとなってもう一度総復習していくことになるのは構わない。


 だが、専門知識は即ちそれぞれの属性に適した知識を得るための授業だ。世界にある八属性―――水、風、火、地、緑、幻、闇、光の属性毎の知識の講義を受けるようになる。


 八属性のうち、五属性を内に秘めるサリアは、ほとんどの講義を上手くサイクルしなければならない―――いや、それ以前に。


(……プロヴァスが、誰もいないんだもの)


 自分と同じ、『複数属性を持つ者』は、サリアの知る限り誰もいない。もしサリアがセカンドに上がって専門知識の授業を選択するとき、複数個も選んでしまえば、不審に思われてしまう。


「…………どうしよう」


 解決案が、見つからない。
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