聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
頭を抱えて呻く。……こればかりは、どうすればいいのか分からない。
思わず涙が溢れそうになったその時、誰かが優しく肩を叩いてきた。
顔を上げ、視界いっぱいに写り込んだ鮮やかな栗色の髪に、サリアは一瞬驚いたものの、いつもの服を脱いで華やかな私服を来ているのだとやや遅れて気づく。
「……エミス?」
名を呼べば、栗色の紙を耳の後ろの当たりで二つに結わえた彼の少女は、にっこりと微笑んだ。
「サリアがいたから、声かけちゃったっ」
語尾を強くする彼女の喋り方が、サリアの悶々とする気持ちを幾分晴らしてくれる。嫌味のない無邪気な喋り方は、物静かな聖職者にはむいていないように思えるが、たった数分言葉を交わすだけでなんだか和む雰囲気を持つ彼女は、きっと将来良き神官となるのだろう。
そんなことを思いながら、穏やかに笑み掛ければ、エミスも無邪気に笑い返してくれる。その笑顔が少しだけ心配そうな色をにじませた微笑に変わり、彼女は遠慮がちに聞いてくる。
「随分困ってたみたいだけど、どうしたの?」
持つべきものは友だと、こういう時に痛感する。悩む自分を見て心配してくれるその心遣いが、暖かい。
「……ん、セカンドに上がった時のことを考えて、少しだけ、ね」
それでもプロヴァスのことをいうわけにはいかなかった。突然得た知識を披露して、その知識を得た経緯などを聞かれたりしたらまずい。
ゆえに曖昧な返答をすれば、エミスは少しだけ寂しそうに笑う。
「………そっか」
信用できないわけではない。けれど、アルジスとした約束が頭に引っ掛かる。それがサリアの思いを言葉にすることを制限してしまった。
思わず涙が溢れそうになったその時、誰かが優しく肩を叩いてきた。
顔を上げ、視界いっぱいに写り込んだ鮮やかな栗色の髪に、サリアは一瞬驚いたものの、いつもの服を脱いで華やかな私服を来ているのだとやや遅れて気づく。
「……エミス?」
名を呼べば、栗色の紙を耳の後ろの当たりで二つに結わえた彼の少女は、にっこりと微笑んだ。
「サリアがいたから、声かけちゃったっ」
語尾を強くする彼女の喋り方が、サリアの悶々とする気持ちを幾分晴らしてくれる。嫌味のない無邪気な喋り方は、物静かな聖職者にはむいていないように思えるが、たった数分言葉を交わすだけでなんだか和む雰囲気を持つ彼女は、きっと将来良き神官となるのだろう。
そんなことを思いながら、穏やかに笑み掛ければ、エミスも無邪気に笑い返してくれる。その笑顔が少しだけ心配そうな色をにじませた微笑に変わり、彼女は遠慮がちに聞いてくる。
「随分困ってたみたいだけど、どうしたの?」
持つべきものは友だと、こういう時に痛感する。悩む自分を見て心配してくれるその心遣いが、暖かい。
「……ん、セカンドに上がった時のことを考えて、少しだけ、ね」
それでもプロヴァスのことをいうわけにはいかなかった。突然得た知識を披露して、その知識を得た経緯などを聞かれたりしたらまずい。
ゆえに曖昧な返答をすれば、エミスは少しだけ寂しそうに笑う。
「………そっか」
信用できないわけではない。けれど、アルジスとした約束が頭に引っ掛かる。それがサリアの思いを言葉にすることを制限してしまった。