聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「まぁそんなことはどうでもよくて! 女の子同士でしかできないお話しましょ!」


 エミスは場を明るくしようとしたのか、急にそんなはしゃいだ口調で胸の前で一度手を叩く。まるで、暗い雰囲気をその音で蹴散らすかのように。


「もう“落ちこぼれ”なんて誰も言わないものね! サリアもこれでみんなと対等に見られるんだから、勉強じゃなくてもっと他のことにも目を向けるべきだと思うの!」


「……他の、もの?」


 首を傾げれば、大きく縦に頷いたエミスは、輝いた表情で例えば、と切り出す。


「ヘアスタイル変えたり、アクセサリーつけて寂しい胸元とかを華やかにしたり、ファッションにもっとこだわるとか」


「………ま、魔法を学んでいる立場がそんなことをするのは、不謹慎だと思うのだけれど」


「駄目? うーん、なら、そうだなぁ……恋! とかはどう?」


「こ、恋?」


 思わず言葉に詰まってしまったのは仕方がない、と思う。突拍子もない言葉は流石に面食らうしかない。

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