聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「だって、サリアってすごく綺麗な顔してるもの! 周りにも、かなりの美形がいっぱいだしっ」


 それは否定しない。特に、自分の友人を名乗る三人に置いてはかなりの美形の類に入る。


 フェイトの茶色のふわふわな髪質は女子たちも羨むほどの繊細さで、笑顔を浮かべる度に細められるライム色の瞳を飾る睫毛はやや短めではあるが、女性から見れば十分なほど長い。


 性格も温和で寛容、欠点と言えば小柄なサリアより少し大きい程度の身長ではあるが、端正な顔立ちと14という年齢を見ても、後数年経てば身長が伸びるのは期待できるし、顔つきも精悍さが加わるはずだから、有望株間違いなしだ。


 赤褐色の髪は寝坊が多いためにかなり跳ねまくっているが、それが愛嬌を呼びむしろ可愛い印象を受ける。シアン色の瞳はやや釣り目ではあるが、ヴォルのすっきりとした顔立ちには丁度良いし、真剣な表情をすれば凛々しさすらも感じ取れる。フェイトとはまた違った美形だ。


 性格はフェイトのようにむしろ物静かではなく元気いっぱいなのだが、彼の太陽を思い起こさせるほどの眩しい笑顔は、見ているだけでこちらもつられて笑顔を浮かべてしまうほど。


 チャコールグレイの肩には着かないが男としてはやや長めの髪を無造作に結わえ、薄氷色の瞳を縁どる長い睫毛はフェイトに勝っているナロンの顔立ちは19歳ゆえの大人の色気とまだ少年らしいあどけなさが混ざって危うげな色香がある。


 寡黙ゆえに怖い印象を持たれがちではあるが、たまに見せる薄い笑みが実は破壊力抜群の凶器であることを知っているのは……きっと、彼と親しくしている者だけかもしれないが。


 媒介に黒槍を操る魔導騎士(ソシアルナイト)としての素質を存分に振るう彼の麗人の無駄な筋肉のない均整のない身体も、巷ではスタイル抜群を素でいくものだ。


 ……結果、この三人といるサリア・エミス・フィニアは嫉妬や憎悪の対象だったわけだが、中でも酷かったのか落ちこぼれと謳われていたサリアだった、というわけだ。
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