聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 常に女子たちから敵対視され、疎外されてばかりの毎日に鬱屈するしかない日々は、そんな色恋沙汰に構っていられるほど余裕ではなかった。魔法使いとしての素養に目覚めてからは幾らか軟化したので、確かに恋愛をするのなら今からが良いのかもしれない。一応年頃ではあるのだし。


「ねぇ、あの三人の中でいいと思うひとはいないの?!」


 きらきらの笑顔で尋ねられ、つい仰け反ってしまったサリアは視線を泳がせながら応答する。


「い、いい友達だとは思うけれど、それ以上は……」


「えー…、なら、他にいい人はいないの?」


「い、いい人……?」


 更に重ねられた問いに、思わず声を詰まらせたサリアに、エミスは目を大きく開く。


「え?! いるの? ね、誰なの!」


「だ、誰って………」


 そんなひといない、と言おうとした矢先、頭の中に銀色が掠めた。


 熱が顔に集まり沈黙してしまったサリアに、エミスは誰なのかという追求を止めない。それをなんとか逸らしたくて、サリアは声を震わせた。


「そ、そういうエミスは?!」


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