聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
3.疑惑
第一楽章
―――何かが、おかしい。
女子寮の奥の華やかな部屋、すなわち居候を一ヵ月近く続けているサリアの部屋で、アルジスは険しい顔のまま沈黙を保っていた。
睨みつけるように見据えた窓の向こうの空は澄み切っているというのに、心の中には疑問が浮かび続け、もやもやとした不明瞭なものが蔓延している。
その理由は、つい数日前の出来事―――サリアと深夜踏み込んだフィフスとなって初めて立ち入りの許される図書館の一室に、収められたひとつの本についてだ。
「……魔法学園というのなら、どんな生徒にも開けた場でなければならないはず……」
魔法使いのタイプは大きく分けて四つ。うち二つは常に存在するが、残り二つは数年に、十年に、百年に一人、という極めて特殊なタイプである。
それでも確実に存在するそれらのタイプをもつであろう生徒は確かに居る。なのに、その存在を生み出さないかのようにフィフスの書庫の最奥に、ひっそりとしまわれていたのかが不思議でならない。
しかも、更に不思議なことは。
「………あの本には、特殊な魔法が施されていた」
言葉にするだけで、あれを見つけた時の違和感がどんどん湧き上がってくる。だが、止まらない疑問が思考を巡らすアルジスの脳を更に奮起させ、加速していく。
女子寮の奥の華やかな部屋、すなわち居候を一ヵ月近く続けているサリアの部屋で、アルジスは険しい顔のまま沈黙を保っていた。
睨みつけるように見据えた窓の向こうの空は澄み切っているというのに、心の中には疑問が浮かび続け、もやもやとした不明瞭なものが蔓延している。
その理由は、つい数日前の出来事―――サリアと深夜踏み込んだフィフスとなって初めて立ち入りの許される図書館の一室に、収められたひとつの本についてだ。
「……魔法学園というのなら、どんな生徒にも開けた場でなければならないはず……」
魔法使いのタイプは大きく分けて四つ。うち二つは常に存在するが、残り二つは数年に、十年に、百年に一人、という極めて特殊なタイプである。
それでも確実に存在するそれらのタイプをもつであろう生徒は確かに居る。なのに、その存在を生み出さないかのようにフィフスの書庫の最奥に、ひっそりとしまわれていたのかが不思議でならない。
しかも、更に不思議なことは。
「………あの本には、特殊な魔法が施されていた」
言葉にするだけで、あれを見つけた時の違和感がどんどん湧き上がってくる。だが、止まらない疑問が思考を巡らすアルジスの脳を更に奮起させ、加速していく。