聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
飢餓にこそ苦しむことはなかったが、一日に与えられる穏やかな時間さえほんの少しで、後は孤独が産む寂寞の念をひたすら耐え抜くだけの日々。
死ぬわけにはいかないという生を見据える思いと、このままこの苦しみの感じない死を迎えられたら、という死を受け入れる思い。その葛藤を繰り返しながらも生きながらえてきたのは、間違いなく縋りついても優しく抱きしめてくれるような存在が、傍らに存在していたからだ。
思い返すのは、暗闇の向こうから差した光の向こうから、穏やかに笑む―――。
「………元気に、しているかな」
少しだけ口調が弾んだ調子になって、今は遠い面影を、眼裏に思い描いて微かに笑む。
人間不信に陥った自分に、どこまでも穏やかに接し続けた、“彼ら”は。
「………そうだと、いいな」
柔らかな笑みを浮かべ、アルジスは溢れた思いをそのまま吐露する。
遠い空の向こう―――そのどこかで、確かに息衝いているだろうひとを目蓋の裏に思い描きながら。
アルジスは椅子に寄りかかり、そっと瞳を伏せて安らかな闇の中へと意識を沈めていった―――…。
死ぬわけにはいかないという生を見据える思いと、このままこの苦しみの感じない死を迎えられたら、という死を受け入れる思い。その葛藤を繰り返しながらも生きながらえてきたのは、間違いなく縋りついても優しく抱きしめてくれるような存在が、傍らに存在していたからだ。
思い返すのは、暗闇の向こうから差した光の向こうから、穏やかに笑む―――。
「………元気に、しているかな」
少しだけ口調が弾んだ調子になって、今は遠い面影を、眼裏に思い描いて微かに笑む。
人間不信に陥った自分に、どこまでも穏やかに接し続けた、“彼ら”は。
「………そうだと、いいな」
柔らかな笑みを浮かべ、アルジスは溢れた思いをそのまま吐露する。
遠い空の向こう―――そのどこかで、確かに息衝いているだろうひとを目蓋の裏に思い描きながら。
アルジスは椅子に寄りかかり、そっと瞳を伏せて安らかな闇の中へと意識を沈めていった―――…。