聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
いつものように扉を開けた先。
森の中にぽつりと開けた平原に佇む学院を照らす太陽の陽射しが窓から射し込む中、目に入り込んだのは、鮮やかな銀色が体勢がやや崩れたことでさらりと流れた一瞬の出来事。
それでも椅子に凭れて眠る彼の人に慌てて駆け寄り、起きたら寝違えでも起こしてしまいそうな彼の寝姿を見つめて、やがてなるべく響かないように声を潜めて、風の魔法を発動させる。
生み出された風が、ふわりとサリアひとりで抱えるにはかなりの労力が必要な体を持ち上げ、ぽふりと音を立てて柔らかな寝台の上へと横たわらせる。
「……幸せそう」
健やかに寝息を立てながら穏やかな夢の世界を彷徨っている麗人の優しい微笑を浮かべた寝顔を見つめながら、サリアはそっと微笑み、手を伸ばす。
触っても絡むどころか指の隙間から零れ落ちていく銀色の髪。サリアの見る限り手入れをしているわけではないはずなのに、女性が羨む程に滑らかな感触の肌。
それでも、程よい筋肉で鍛えられた身体も、節の角張った手も、女性にはないものだ。見た目こそ華奢でこそあるが、真実それとは程遠い。
森の中にぽつりと開けた平原に佇む学院を照らす太陽の陽射しが窓から射し込む中、目に入り込んだのは、鮮やかな銀色が体勢がやや崩れたことでさらりと流れた一瞬の出来事。
それでも椅子に凭れて眠る彼の人に慌てて駆け寄り、起きたら寝違えでも起こしてしまいそうな彼の寝姿を見つめて、やがてなるべく響かないように声を潜めて、風の魔法を発動させる。
生み出された風が、ふわりとサリアひとりで抱えるにはかなりの労力が必要な体を持ち上げ、ぽふりと音を立てて柔らかな寝台の上へと横たわらせる。
「……幸せそう」
健やかに寝息を立てながら穏やかな夢の世界を彷徨っている麗人の優しい微笑を浮かべた寝顔を見つめながら、サリアはそっと微笑み、手を伸ばす。
触っても絡むどころか指の隙間から零れ落ちていく銀色の髪。サリアの見る限り手入れをしているわけではないはずなのに、女性が羨む程に滑らかな感触の肌。
それでも、程よい筋肉で鍛えられた身体も、節の角張った手も、女性にはないものだ。見た目こそ華奢でこそあるが、真実それとは程遠い。