聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
 同じ年頃のはずなのに、性別が違うだけでここまで違いがあるものか。


 女子寮の暮らしが長く、周りにいる友人とも、自分を中傷する人間にも、此処まで近しい接触はなかった。


 彼との暮らしで思い知らされるのは、自分が魔法使いとして成長するために必死で、他人との接触がほとんどなかったことを思い知らせる。


 無防備に晒された昏昏と眠る彼の姿を見つめながら、サリアは楽しそうに笑う。


 それほどまでに楽しむ要素があるとは思えない、眠る麗人の髪弄りを無邪気に楽しめる理由など、理解せずに。


 そんな中、そっと動いた唇を見て、起きたのだろうかとサリアは手を引いた。


「アルジス……?」


 呼びかけても、反応がない。………寝言でも、呟いたのか?


 そう思った矢先、もう一度唇が動き―――誰かの名を、つぶやいた。


「………ナル、サス…ぁ……」


「え……?」


 聞き慣れない、名前を呟かれ。


 それを聞いたサリアが思ったのは、その名前の人物が誰なのか、という疑問より先に、不可思議な気持ちが沸き立った。
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