聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「母上を、侮辱するな!」
怒号と共に爆発した魔力が、青年の傍で弾けた。周囲にいた兵士たちは爆発によって吹き飛ばされ、青年の傍から引き離される。守護する者がひとりも周囲にいなくなった状況に、青年は歯噛みする。
少年は握っていた剣をしまい、今度は両手で魔力を練って青年へと叩き込む。青年は迫り来る脅威に、太刀打ちできない―――。
「…え?」
驚いたのは、少年だった。
狙って打ったはずの魔力は青年に当たる前に、ひとりの魔術師によって阻まれたのだから。