聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「……フィフスの書庫。あそこに置いていた僕の魔法を行使したこの本が、何者かによって魔法を弾け飛ばされていました」
ゼフロスの眼前に放り投げられた一冊の本が着地と同時に開き、勝手に広がる。それに一瞥をくれたあと、ゼフロスは再び視線を上げた。
「……幻術士(エンチャンター)のお前の術を破るってことは、相当な手練だな。―――誰だか分かるのか?」
「…………それがまったく……と、言いたいところですが…」
視線がやや伏せられ、考え込むような仕草をした青年は、やがて重い口を開く。
「………僕の魔法を打ち破るために使われた魔力の質が、少しだけ懐かしく感じましてね」
「―――懐かしく?」
「えぇ。………僕の記憶が間違っていなければ、あの魔力の持ち主は―――…」
告げられた名に、ゼフロスは驚愕する。
「まさか? そんな大物がこんな場所に来る理由がないだろう? 第一、どうやって入り込んだんだ」
「…………それは僕にも分かりません。ただ分かるのは、その本に僅かに残っていたものには、僕に彼を想像させるものだった。―――それだけのことです」
そして、と一区切りを入れて青年は呟く。
ゼフロスの眼前に放り投げられた一冊の本が着地と同時に開き、勝手に広がる。それに一瞥をくれたあと、ゼフロスは再び視線を上げた。
「……幻術士(エンチャンター)のお前の術を破るってことは、相当な手練だな。―――誰だか分かるのか?」
「…………それがまったく……と、言いたいところですが…」
視線がやや伏せられ、考え込むような仕草をした青年は、やがて重い口を開く。
「………僕の魔法を打ち破るために使われた魔力の質が、少しだけ懐かしく感じましてね」
「―――懐かしく?」
「えぇ。………僕の記憶が間違っていなければ、あの魔力の持ち主は―――…」
告げられた名に、ゼフロスは驚愕する。
「まさか? そんな大物がこんな場所に来る理由がないだろう? 第一、どうやって入り込んだんだ」
「…………それは僕にも分かりません。ただ分かるのは、その本に僅かに残っていたものには、僕に彼を想像させるものだった。―――それだけのことです」
そして、と一区切りを入れて青年は呟く。