短ペン集
「あっ、咲子さん」
「はい」
「あのね、車の後部に誰かいない?」
「誰かって……」
「ほら、今、また見えたよ」
信太郎が叫ぶ。
「咲子さん。男の子がこっちを覗くの」
「はぁ……」
「孝夫さんに言って、ちょっと車、止めて貰ってくれない?」
梶原の車が、路肩に寄せて止まった。信太郎も、その後ろに止める。
太陽はもう殆んど落ちかけていた。
「どうしたんだよ。完全に日が暮れてしまうぞ」
梶原は車を下りて、近寄ってきた信太郎に言った。
「ああ、すまないな。しかし、お前の車に、男の子が乗っていないか」
「バカ言うなよ。後部は荷物だけだよ」
梶原はハッチバックを開けた。
雑多に押し詰められた、キャンプの荷物しかない。
「誰もいないよ」
「おかしいな……」
みどりも車から降りてきて、確認する。
「おかしいわねぇ……。私も見たのよ」
ほどなく、二組の夫婦は、再び出発した。今度は梶原に代わって、信太郎が先導した。
全く人気の無い山道を、二台の車が走って行く。
「はい」
「あのね、車の後部に誰かいない?」
「誰かって……」
「ほら、今、また見えたよ」
信太郎が叫ぶ。
「咲子さん。男の子がこっちを覗くの」
「はぁ……」
「孝夫さんに言って、ちょっと車、止めて貰ってくれない?」
梶原の車が、路肩に寄せて止まった。信太郎も、その後ろに止める。
太陽はもう殆んど落ちかけていた。
「どうしたんだよ。完全に日が暮れてしまうぞ」
梶原は車を下りて、近寄ってきた信太郎に言った。
「ああ、すまないな。しかし、お前の車に、男の子が乗っていないか」
「バカ言うなよ。後部は荷物だけだよ」
梶原はハッチバックを開けた。
雑多に押し詰められた、キャンプの荷物しかない。
「誰もいないよ」
「おかしいな……」
みどりも車から降りてきて、確認する。
「おかしいわねぇ……。私も見たのよ」
ほどなく、二組の夫婦は、再び出発した。今度は梶原に代わって、信太郎が先導した。
全く人気の無い山道を、二台の車が走って行く。