短ペン集
「みどり……?」

「……」

 みどりは恐怖で、顔を硬直させて、ついには伏せてしまった。

 そんな時、信太郎は静かに言った。

「冗談、……だよ」

「……えっ、嘘?」

 みどりは顔をあげた。

 泣いている。

「もうっ」

 みどりは完全に、膨れてしまった。

「そんなに怖がるとは思わなかったよ」

「何よ、冗談じゃないわよ」

 涙目のまま、怒っている。

「ごめん。悪かったよ」

 信太郎はみどりをなだめながら、車を走らせた。


「おかしいな、まだ着かないな。そろそろ着いてもいい距離だが……」

 ふと、バックミラーを見ると、梶原の車が見えない。

「みどり、電話してみてくれ」

「あれ、電波が立たないわ」


 信太郎は車を止めた。

 暫く待っていたが、いっこうに現れる気配はない。

 いつの間にか、もう、真っ暗だ。雨がポツポツと降り出している。

「何かあったのかも知れない。戻ろう」

 信太郎は反転し、元来た道に車を出した。

 こんなに暗いなら、逆に車のヘッドライトは目立ちやすい。

 信太郎は、注意しながら、車を走らせた。


 その時である。

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