短ペン集
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眼鏡が雲って仕方がなかった。
路上で貰った某有名スポーツクラブのうちわを、加齢臭を気にしつつ、駅のホームでぱたぱたと扇ぐ。
「あの、すみません」
予期せぬ出来事であった。
おそらく視界の端からやってきたのだろう。女子高生に、話し掛けられたのだ。
「ん? 私?」
「すみません」
「はい……。なんですか?」
「大阪、解体です」
「えっ?」
「大阪解体です」
「……うん」
「よろしいでしょうか?」
「……」
「よろしいでしょうか?」
「あー、行政区分とか、変わるんですかね」
「そうなるかもしれません」
「朝刊には載ってなかったようだが」
「そうならないかも、しれません」
「どういうこと?」
「その眼鏡……ちゃんと見えてますか?」
「眼鏡? 私はド近眼に、ド乱視なんです。半年前に買い替えて、今はちゃんと見えてますよ」
「焦点は合っているのですね」
「君の輪郭もはっきりしてる」
「そうですか」
「それが、何か?」
路上で貰った某有名スポーツクラブのうちわを、加齢臭を気にしつつ、駅のホームでぱたぱたと扇ぐ。
「あの、すみません」
予期せぬ出来事であった。
おそらく視界の端からやってきたのだろう。女子高生に、話し掛けられたのだ。
「ん? 私?」
「すみません」
「はい……。なんですか?」
「大阪、解体です」
「えっ?」
「大阪解体です」
「……うん」
「よろしいでしょうか?」
「……」
「よろしいでしょうか?」
「あー、行政区分とか、変わるんですかね」
「そうなるかもしれません」
「朝刊には載ってなかったようだが」
「そうならないかも、しれません」
「どういうこと?」
「その眼鏡……ちゃんと見えてますか?」
「眼鏡? 私はド近眼に、ド乱視なんです。半年前に買い替えて、今はちゃんと見えてますよ」
「焦点は合っているのですね」
「君の輪郭もはっきりしてる」
「そうですか」
「それが、何か?」