彼×私×彼女の事情
オートロックのチャイムではなく直接玄関のチャイムが鳴った。
またセールスかと思い覗くだけ覗いてみた。
管理人さんだ。
「おはようございます」
と言いながら少しだけドアを開けた。
「おはようございます。掃除したいんですけどドアの所にかけてある袋から液体が漏れてて。邪魔なんで片付けて貰えます?」
「ハァ?」
見てみるとドアノブに確かに荷物が入った袋がかかっていた。確かに袋から液体が漏れている。
「スミマセン。すぐに片付けます」
「お願いします」
そのまま袋をとり部屋の中へ。水が漏れてはいけないのでシンクヘ持っていき中身をチェック。
水筒とタッパー。漏れていた水は保冷剤が溶けたものだった。
タッパーに冷汁の作り方とかかれた紙が貼ってある。
水筒に付箋で「母さん特製のブレンドティー喉にいいよ」と書かれていた。
俊と別れたあと玄関でドンと音がしたことを思い出した。
この袋をかけた時の音だったんだ。
俊はこれを取りに帰ってたんだ。私の為に帰ったんだ。
後悔の思いが加速する。何やってるんだろう私は……。影の部分を見てほしくて相手の影の部分は全く見ていない。何かをする時ってちゃんと理由があるんだ。
聞かないと。