彼×私×彼女の事情
「ごめんね。母さん、母さんばっかり言って」
俊が私の目を真っ直ぐみて話しだした。私の心を読んだように。
「今日、尊敬してる先輩にも怒られちゃった。僕が思ってる以上に僕っておかしいんだよね。だからきちんと説明しないといけないのにすぐ行動しちゃうらワケわかんないよね。美樹のこと考えてるつもりになってただけだった」
胸が痛いなぁ。ちゃんと受けとめて考えてくれたんだ。
「僕にとって母さんは母親であり親友でもあるんだ。昔から何があっても僕の味方をしてくれた。親なら反対したいこともあったと思う。僕の大切な人。でも、恋人は美樹だけ。それは解ってほしい。絶対、手は放さない」
胸がドキッとした。時間が止まったようだった。俊くんの告白は少し複雑だったが嬉しく感じた。私の目を見て真っ直ぐ話す俊の言葉はまぎれもなく真実だ。
少し間を置いて答えた。
「私こそごめんなさい。最初から言ってたもんね。頭では理解したつもりだったんだけど誤解して嫉妬しちゃった……解ってるんだけど俊くんを自分だけのもんだって感じたくて……馬鹿な話だよね。本当にごめんなさい」
正直に話した。
ちょっと恥ずかしい。胸の内側を素直に見せることが出来た。
俊くんの偉大な力を感じた。
「これからは良いことも悪いこともちゃんと思ったことは話す。俊くんの話も聞く」
私が言うと俊くんは笑顔で
「絶対そうしよう。なんか近づいた気がする」
「うん」
そう言って私と俊くんは今回のすれ違いについて話し合った。
連絡は早めにまめに取り合うこと。疑問はそのままにしないこと。思ったことは言うこと。そして話し合って解決方法を2人で導きだすこと。
「解った。お義母さんに嫉妬せず、家族みたいに思う」
「本当?嬉しい。ゆっくりでいいからね」
俊くんに変わって欲しいと思うなら私から変わらないと。そうやって2人で成長していかないと。
私はいつになく堅い決意をした。