彼×私×彼女の事情
だってじゃない。最悪だ。この家族の考え方もおかしいし、インフルエンザや俊とのケンカで連絡先のことをすっかり忘れていたところをうまいこと利用された。嫌がせされてる。
横を見るとサキも顔を引きずっている。私からの話だけしか聞いていなかったので大袈裟だと思っていたのだろう。しかし現実を目の前にして得意の営業スマイルが出来なくなっている。
その姿がなぜか不思議と笑いが出た。
すると何かが吹っ切れたように勇気が湧いてきた。怒りが勇気に変った瞬間だった。
「ハハハァ。そうですよね。お義母さんも悪い人だなぁ。驚かすなんて。連絡先は俊から聞いていると思っていました。私と話が行き違ったみたいですね。俊ともっと仲良くなって連絡ミスがないように努めないと。これから今まで以上に頑張るので応援してくださいね。あえる時間増やさないと」
言ってやった。
嫌われてもいい。俊に怒られてもいい。今、凄くスッキリして充実感たっぷり。
お義母さんが荷物を片付けながら一瞬睨まれた。しかし今の私には怖くない。勝ち誇った気分だ。
「サキ、本当にお義母の料理おいしいんだって。一緒に教えてもらおう」
そういってサキの手を引っ張った。
「うう、うん」
サキはまだ引いているが私はパワーが湧いてきてしかたがなかった。このパワーをどこかにぶつけたくてしかたがない。
お義母さんに下手に攻撃しても空回りしそう。ここはアラサーの人生経験から慎重に行かなければ。
サキと一緒にお料理教室に来たみたいにお義母さんの料理の作り方を一生懸命に聞いた。
最初はムッとした感じだったが教えるのが楽しくなってきたのか笑顔が増えてきた。サキも約束したとおり機嫌をそこねないように積極的に質問をするなど協力してくれている。凄くいい感じだ。
そして、私はこの家にきて初めての事をする。こんな日がくるなんて思いもしなかった。