彼×私×彼女の事情
「はじめまして。噂になるほどのものではないですけど」


テレながら謙虚に新藤さんは挨拶してくれた。出来る人は人間的にも優れていると改めて実感する。私達に対しても低姿勢。



「はじめまして。大学が一緒だった……」


私が話し始めると


「美樹さんとサキさんですよね。恵子から何度も話を聞いています。美樹さんは何でも知ってる情報通でサキさんは凄く秀才だと」


新藤さんが割って話してきた。



情報通と褒められた気分だったが裏を返せば恵子も根っからのお嬢様で世間知らずだっただけである。



「正解です。いらないことまで言われてなかったらいいけど」苦笑いで答えた。



「話されたくないことって何?成績のこと?それはまた後にして、今度結婚することになったの。それを報告したくて。本当に会えてよかった。結婚式には絶対に来てね」




「おめでとう」


サキと二人で声がそろう。


恵子が新藤さんと歩いてきたときそんな気がしていた。感の悪い私でも解る。かわいらしいが似合う恵子とスポーツマンタイプの新藤さんとは絵になる。サッカー部とそのマネージャーのきれいなカップルだ。


嫉妬心ばかりの私自身が本当に嫌になる。


心からおめでとうって言える日が早く来て欲しい。



「おぉ〜来てくれたのか~。」


教授の声だった。


いつの間にか挨拶が終わっていた。



恵子の幸せな話を嘘の顔で聞かなくてはならないのかと思っていたのでグッドタイミングだ。教授の面白くない話のほうがまだまし。


教授はよくしゃべる。


昔話から今の研究の話まで長々と。


新堂さんが話をあおるから今日はさらに長くなりそう。


直立でずっとマシンガントーク。

15分はたっただろう。


私が疲れてきて体勢を変えようと後ろを向いたとき、ドアから誰かが入ってきた。


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