彼×私×彼女の事情
普段は調剤薬局で薬剤師の仕事をしている。
昨日の出来事が嘘のように現実が押し寄せ、戦争のような1日が始まる。
処方箋を持った患者さんが次々とやってくる。
「高橋亮介様」
名前を呼ばれた患者さんが投薬台までやってきた。お母さんかな隣に居る人?
「西本病院さんのおくすりですね。今日は風邪を引かれたんですか?」
「そうなの。仕事に行こうとしたら鼻水が出ているのに気がついて急いで病院に連れてきたの。たいしたことないって先生に言われて安心したわぁ」
急いで病院に連れてきた?先生に言われたってことは診察室に一緒に入ったってこと?この人32歳よね、一人で病院きて診察を受けて一人で帰るぐらい出来るでしょ。出来ない理由が見当たらない。ってかお母さんが話すだけで本人は横でニコニコ笑ってる。自分のことでしょ?私は心の中が納得できないことだらけだった。
「そうですか。よかったですね。」
お母さんと息子さんは目を合わせて微笑み会っていた。
「以前、抗生物質で薬疹が出たけど名前がわからないと言っていましたが今回出ている抗生物質とは見た目など似ていますか?」
私はあえて息子さんの方に話しかけた。
「ん〜どうだっけ?」
「これは大丈夫よ。去年、南病院でいただいたときのと一緒。飲んだことあります」
自分の薬ぐらい32歳なんだから自分で答えなさいよ。心の中で叫んだ。
「薬疹がね……」
薬疹が出た時はこの子が死ぬんじゃないかってビックリした話から、息子の仕事が大変な仕事でストレスを感じやすいから病気になりやすいんじゃないかとか息子を心配するマシンガントークが始まった。
「大変ですね。これが抗生物質で……」
私は話が途切れた隙に薬の説明をした。この話をずっとされては他の患者さんに迷惑をかけてしまうし、なによりこの話をずっと聞くだけの忍耐を今日は持ち合わせていない。