彼×私×彼女の事情

 今日は午前が修了するまでの間、私だけでも30人近くの人の薬を出した。他の薬剤師も同じくらい出しているので相当、患者さんがきたはずだ。



 私が疲れて机に倒れこんでいると



 「朝は大変でしたね」


 事務員の美紀子が声をかけてくれた。暗黙の了解でどの患者さんが大変だったかわかる。



 「あれってマザコン?」



 「多分。何か最近多いみたいですね。親離れも子離れも出来ない親子。年の離れたカップルみたいで、二人で温泉に旅行して家族風呂に入るらしいですよ」



 「えっ、なにそれ?」



 美紀子の話にビックリした。世の中がいつそんなことになっているのか気づきもしなかった。確かに今日来た高橋さんもカップルのように二人仲良く帰っていった。



 「草食系男子とか理系男子とかお弁当男子とかもぉ多くて時代についていけない。私は昔ながらの九州男児でいい」



 今日の患者さんをみて本気で思った。


 私は夢見てるだけって言われるかも知れないがやっぱり完璧じゃなくてもいいから私をリードしてくれる王子様に迎えに来て欲しい。お姫様が迎えに行くのは嫌だ。



 「あの人の彼女とか大変そうですね。お母さんが一緒にデートついてきたりして」


 美紀子が冗談ぽく言った。



 想像して二人でぞっとした。


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