彼×私×彼女の事情
「どうぞ」
「これ、オレンジティーですよね?」
鈴ちゃんが不思議そう言う。
「嫌いだった?」
「いえ、大丈夫です。どちらかというと好きです。ただ意外だっただけです」
「意外?」
「本題に入りますが」
私の話は聞いてくれないのね。この先、小姑と上手くいく方法も考えないと……。
「今日は母から伝言を頼まれてきました」
「はい」
体が反応して座り直す。
「今日は息子は渡しません。こんな挑戦的な態度はじめてです。私に勝てるなんて思わないようにだそうです」
「……」
「えっ、どういうことかな?」
忘れてたマザコンって言葉を思い出した。
「兄がはじめて母の泣き落としに従わず話し合いをしようとしています。それに昨日の無断外泊、母のプライドを傷つけました。美樹さんが兄の携帯から私の携帯にメール送ってきたんですよね?兄に聞かなくても兄の性格など考えたらあの文面はおかしいのでわかります。母も見ましたから」
バレてたらしい……。
ヤバイ展開になってる……。
うまくやっててメールしたのになんで見せるの!
開いた口が……閉じれない。
「あんな宣戦布告されたのはじめてだって言ってました」
そう言ってオレンジティーを一気に飲み干した。
反論の言葉が出てこない。
「じゃ、ちゃんと伝えたので帰ります」
「えっ、ちょっと」
ドアへ向かう鈴に問い掛けた。
「私、どうしたらいいの?」
靴を履いて振り返り鈴ちゃんが答えてくれた。
「私はあなたと兄と母に挟まれて大変迷惑しています。兄と続けるという道を取ったんなら自分で努力してください。やさしさで一つだけアドバイスしておきます。母はとても料理が上手でプロ級です。私たちは毎日それを食べて育ちました。インターネットに掲載されているレベルの料理では胃袋は掴めませんよ。じゃ健闘を祈りますご馳走様でした」
そう言って鈴ちゃんは帰って行った。