彼×私×彼女の事情
「これどうぞ」
お義母が席に座ると同時に持参したケーキをさしだした。
緊張しているせいか私、焦ってる。
落ち着こう。
「ありがとう。また、俊に好物聞いてきたの?」
優しい笑顔で答えてくれるが、言葉にトゲがある。
「いいえ、これは私の好きなものです。私の好みも知って欲しくて」
「あら、そう。覚える必要ないから今日だけ、楽しませて貰うわぁ。お茶入れてきましょ」
「ありがとうございます」
苦笑いで答えるのが精一杯だった。
ヤバい。圧倒されている。
このあと、頑張れるかな。
イヤ、こっちも作戦をねってきたんだ。負けてたまるか。
「ポジティブ、ポジティブ」
呪文のように呟いて気合いを入れ直して仕切りなおし。
するとお義母さんがケーキとアイスティーをいれてきてくれた。
カートで押してきた。ドラマや映画でしか見たことない。
現実離れしている。
「じゃ、もったいないからいただきます。お昼ご飯食べれなくなるわね。こんな時間に食べると」
「ははぁ」
確かに時間は11時前だった。
「で、今日はどうされたの?急に来るだけの理由があるんでしょ?」
「鶴の作り方教えて貰おうと思って」
「鶴?」
お義母さんは不思議そうに言った。
「玄関にありましたよね?いくつものパーツをつなぎあわせて出来た立体的な鶴ありましたよね?」
「あぁ〜あれね。インターネットで調べれば解るんじゃないの?」
「この間来たときに見て気になってたんです。祖母の家にあったのを思い出して懐かしくなって。折方を調べても不器用なんで難しかったのでぜひ教えてもらって他にも応用出来たらなぁっと」
ちょっと話に脚色があるがのってくれた。
呆れた顔をしているが私は諦めない。
「ぜひ、教えてください」
私は真剣な顔でお願いした。