彼×私×彼女の事情

「あっ、そうだ！公園で動けなくなって泣いてたの。そしたら私を通行人から守るように日傘で隠してくれた男の子が居たの」


私は失恋のことを時間ができれば考えてしまう。だから家に居るときはDVDを見たり、お酒の力を借りたりしていた。健治を忘れることと一緒に隣の彼のことも忘れていた。



「日傘？彼が持ってたの？」



不思議そうにサキは言う。


「そう。晴雨兼用って言ってた。」


「へぇ～男の子で珍しいね。」


確かに言われてみれば珍しい。


女の子でも持っている子は少ない。


今思い出して顔がにやけた。


その顔を見てサキがさらに不思議そうな顔で私に言った。


「なにその顔。」


「いや～それがねぇ。有名人なのかな？私が知らないだけで。ビックリするくらいの美少年だったの。その瞬間だけ自分が失恋して泣いてたこと忘れたくらい」


「何それ？意外と余裕あるんじゃん」


そのことに関しては否定できない。


自分でもバカって思ったくらいだから。

　
「モデルさんとかそんな感じ？」



「うんうん。肌もきれいで顔も一度もぶたれた事とかないんじゃないかって思うくらい整ってた。目力も凄くて」