彼×私×彼女の事情
通知不可能と表示が出ていた。
?
涙を拭い電話に出てみた。
「もしもし。美樹?サキだよ。聞こえてる?」
「サキ〜」
声を聞いてホットした。甘えたくなった。
カーテンもあけず、電気も付けていない暗いリビング。その片隅で膝を抱えながらサキに話した。
サキは会社の電話が新しくなったからちゃんと国際電話ができるか確かめる為にかけてきたらしい。
だけど、ちゃんと聞いてくれた。チケットの話からお義母さんの腰の話。病人の彼女よりお義母さんの呼び出しに従ったことほか色々と話した。
「大変だったね。でも、嘘をついたり騙したりしたわけじゃないよね?ちゃんと話し合ったら?2人とも話してるようで話し合ってないでしょ?」
確かに……。
正直、サキの言うとおりだと思った。
話しはしているが深い部分には触れていない。
「俊くんだって魔法使いじゃないんだから何でも解るわけじゃないよ。気が付いて欲しくても見えないところで泣いちゃってるから解らないんだよ。我慢しちゃってたんでしょ?わざわざ無理して」
「うん」
「好きになれば好きになるほど嫌われたくないから我慢しちゃうんだよね。本気で好きなんだ俊くんのこと。好きだからどうでもいい小さなことも全て向き合っちゃうんだよ。もっと知りたいと思うから。どうでもいい人なら気になんないもんね。すぐに忘れちゃうし。気になるってことは幸せなんだよ」
サキのやさしく、ゆっくり話す言葉が私を癒していく。心の痛みが楽になっていくのを感じた。
泣き止んだはずだったのに涙がまた出る。
電話越しでもサキの力は私に確かな力をくれた。
「さぁ、薬飲んでカーテンあけて俊くんに会うときの準備しなさい。きっと今日の夜、会いに来てくれるから」
「うん。ありがぁとお」
「インフルエンザ、5日で治せないと笑い者よ。笑って病気吹き飛ばしなさい」
サキに元気を貰って電話を切った。