迷い子
「そっかそっか。まぁ、楽しいことばっかじゃねぇからな…世の中は…」
目を細めて言うその表情は、少し悲しそうだった。
「まぁ、話ならいつでも聞いてやるからな。あたしは海子。海の子で、アコだ。お前は?」
「私は、綾です。」
「じゃあな、綾。あたしはいつもここら辺うろうろしてっから、いつでも来な」
そういうと、軽く手を上げて去って行ってしまった。
それからというもの、私は毎日のように夜の街を歩くようになり、海子と親しくなっていった。
今では海子姉と呼ぶほどになり、一人っ子だった私は血が繋がっていなくても、姉と呼べる存在ができて心から喜んだ。