絶対、逃がさない!(短編)
 距離は100メートルもなかったから、楽勝。

 すぐに追いついた。

 民家の塀にはりついて、ガードするように鞄を抱きしめていたのは、間違いなく陽菜だった。

 いつもだったら、ここで、かまきりをかみにくっつけたり、ののしったり、鞄を取り上げて、高いところにおいてきたりもするんだけど・・・



 できなかった。



 おれは中学生で、もう、小学生じゃなかった。

 いつまでも、ガキみたいなことしていられなかった。

 少しずつ、男女というのを意識する年頃だった。



「・・・」



 長年の習性でおいかけたけれど、どうしていいのかわからなかった。

 久しぶりに会った陽菜は、まるで違う人みたいだった。

 見慣れない可愛らしい制服をきているせいかもしれない。

 どうしていいかわからなくて、でもいつもと同じようにするしかなくて・・・とりあえず、いいたいことをいった。




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